物の流れを意識する

お前はこの部屋の主のはずなのに、部屋の中の物を支配するどころか、大量の物に溺れ、逆に物に支配されてしまっている。

これはつまり、お前が部屋の中の物をコントロールできていないということだ。

お前が『所有している物』は、お前の『管理下にある物』のはずだ。
だが、本来管理下にあるはずの物を、お前はまるで管理できていない。
そういうことを言っている。

物をしっかり管理できていれば、この部屋のように、物が多すぎて手に負えなくなるような事態にはならないってことだ。
今の段階ではそのくらいの理解でかまわん。

物を管理するためには、物についての理解を深めていくことが必要になる。
そして、今の段階でお前にとって役立つのは、部屋の中の『物の動き』を理解することだ。

ああ。物は部屋の中で動いている。
例えば、部屋の写真を、同じ位置から、朝、昼、晩に撮ったとしよう。
それを見比べれば、物の配置が全く同じではなく、いくらかは物は動いているはずだろ？

・・物の位置が変わる、という意味だ。
まあ動くといっても、当然、物自体が勝手に動くわけではなく、動かしているのはお前自身なんだけどな。

それと、動き方のパターンは物によって異なる。
頻繁に動く物もあれば、ほとんど動きが無い物もある。

例えば、家具とかテレビのような物はほとんど動かない。
こういう物は、部屋の模様替えでもしない限りは動かすようなことはしないからな。
一方で、テレビのリモコンのような物は頻繁に動く。
しょっちゅう手に取って使う物だからだ。

試しに、身の回りの物、なんでもいいが、一日のうちにどういうパターンで動くのかを考えてみるがいい。
例えば、いつも使っている『スリッパ』とか『マグカップ』とかな。

普段、物をどう使うかなんて自分ではほとんど意識していないが、あらためて動きのパターンを考えてみることで、ふとしたことに気づくときもある。
　
「これはここに置いた方が使いやすいんじゃないか？」
「ここに収納したらスッキリするんじゃないか？」
などのように、物をより効率的に、効果的に使えるよう改善できることもある。

こういうふうにして、物の動きを理解することは、生活の改良、もっと言えば、生活の設計にまでつながっていく。

さっき、部屋の写真の例え話をしたが、この写真の話をもう少し掘り下げてみることにしよう。

同じ位置から定期的に部屋の写真を撮ったとして・・、そうだな、１時間に１回ぐらい写真を撮ったとして、それを一週間分ぐらい撮りだめたとするだろ？
その画像を連続的にコマ送りの映像として見たとしたら、物の動きはどう見えるだろうか？

例えば、テレビのリモコンに注目してみたとしよう。一体どんな動きをするのか。
おそらく、あっちに置かれたりこっちに置かれたり、乱雑な動きをするだろうな。

しかし、乱雑といっても、部屋のどこにでも置かれるわけではなく、だいたいテレビの前あたりのエリアにあるはずだろ？
テレビのリモコンを玄関とかトイレに置いたりはしない。
そういう、動きの規則性も見えてくるだろう。

こういった乱雑な動きをする物も多いが、しかし、中には、大きな流れを作って動いている物がある。
最もわかりやすいものが、洗濯物だ。

服には、着る→洗う→収納する、というサイクルがあるだろ？
もっと細かく言うと、
・着ていた服を脱ぐ
・洗濯する
・洗濯した服を干す
・乾いたら取り込む
・畳んで収納する
・服を収納から取り出して着る
こういうサイクルがある。
　
だから、洗濯物がどう動いていくか観察した場合、『洗濯機』、『干す場所』、『タンス』あたりを結んで循環して動いていくはずだ。
そういう洗濯物の『動きのサイクル』がある。
コマ送りの映像でも、循環する動きが見られるだろう。

部屋の中には、『個々の物の動き』があり、なかにはこんなふうに、物の動きが『流れ』や『サイクル』を作っている場合があるんだ。