シンプルライフの魔人

汚部屋住人である青年とシンプルライフを説く魔人との対話。

魔人との出会い

更新日:

それはある夜のことだった。

ビリビリという異音でボクは目を覚ました。
焦げ臭いようなにおいがする・・。まさか火事か!?
飛び起き、部屋の明かりをつける。

見回してもどこも燃えてはいない。燃えてはいないが・・。

そのときにボクの視界に入ったのは、火ではなく、部屋の中に浮かんでいる闇の渦のような物体だった・・。
その渦のまわりには青い電光が何本もはしり、うごめいている・・。

一体何だこれは・・。

焦げ臭いようなにおいは、この青い電光が発しているのだろうか。

何が起こっているんだ・・。どうしてボクの部屋にこんなものが・・。

どうしていいかわからず立ちすくんでいると、円形だった闇の渦がその形を変えていることに気づいた。
次第に縦長にのびて楕円形に広がっていく・・。

そしてその渦の中から、何かが伸びてくるのが見える・・!

 

・・それは手だった。

そしてもう一本の手も、伸びてくる・・、さらにツノのようなものが見え、やがて全身がその姿を現した。

それは人間のような・・、でも明らかに人間じゃない。人間に似たなにかだった。
今、ボクの部屋の中に、その『なにか』が侵入してきたのだ。

 

 

そいつはあたりを見回した後、ボクのほうを見る・・。

魔人
フフッ・・。驚かせたようだな。
カイワレ
お・・、お前は誰だぁ・・!

しぼりだした声はかすれていたが、そいつには聞こえていたようだった。

魔人
オレか?・・オレは魔人だ。
魔人
ククッ。別に危害を加えたりはしない。まあ落ち着け。

頭の中が真っ白なまま時間だけが経過していく。

 

この『魔人』はずっとこちらを見ている。

しばらくその状態が続いたあと、魔人が再び口を開いた。

魔人
少しは落ち着いたか。
魔人
見ての通り、オレは人間じゃないが、だがお前に敵対するような存在ではない。
魔人
お前の名は『カイワレ』だろ?
カイワレ
ええっ!なぜボクの名を・・?
魔人
オレは普段、亜空間に住んでいるんだが・・、
魔人
以前からこの場所に強い混沌を感じていてな。
この部屋と、その住人であるお前のことを観察していたのさ。だからそのくらいは知っている。
カイワレ
混沌・・・。
そうだ、さっきの黒い渦は・・?

魔人の後ろに目をやると、闇の渦はいつの間にか消えていた。

魔人
あれは、『ポータル』だ。
魔人
オレの住む亜空間と、こちらの世界をつなぐ門のようなものだな。
カイワレ
なんでそのポータルがボクの部屋に??
魔人
それはこの部屋が放つ瘴気と混沌のせいだ。
魔人
混沌の特異点には、ごくまれに他の世界とのつながりができることがある。
お前の部屋があまりに汚すぎるせいで、この場所に混沌の特異点が生じ、オレが住んでいる亜空間とのポータルができてしまったようだ。
カイワレ
な、なんだって・・・。部屋が汚すぎるせいで・・。
そんな・・バカなことが・・。

 

魔人は部屋の中を見回している。

魔人
しかしこの部屋・・きったねぇよなあ・・。
そりゃ、こんな環境ならポータルの一つや二つできてもおかしくはないかもな・・。ククッ。
カイワレ
なっ、なんて失礼な!
魔人
クククッ・・。お前が望むのなら、この混沌から解放する方法、つまり片付ける方法だが、それを教えてやってもいいんだぞ?
カイワレ
ボ、ボクは散らかっている方が居心地がいいんですよ!ほっといてください。
魔人
フム。そうか。では一つ聞くが・・。
魔人
もしもオレが「この部屋を一瞬でキレイに片付ける魔法を使ってやろう」と言ったらどうする?それでもお前はそれを断って汚部屋生活を続けるというのか?
カイワレ
いや、そりゃあ、魔法を使ってもらうに決まってるじゃないですか。
魔人
なんだ、じゃあやっぱり汚部屋よりも片付いている方がいいんじゃねえかよ。
カイワレ
それは・・、そんなに簡単に片付く方法があれば、当然そっちを選択するってことですよ。
カイワレ
・・というか魔人さん!そんなステキな魔法が使えるんなら使ってくださいお願いします!(土下座)
魔人
・・オレにそんな魔法が使えるわけねえだろ。
カイワレ
エエエ!!
そ、そんな・・。めちゃくちゃ期待しちゃったじゃないですか。ひどい。あなたはひどい人間だ。
魔人
人間じゃねえよ・・。魔人って言ってるだろうが。
カイワレ
・・・。

 

カイワレ
・・一瞬で片付くならともかく、この部屋を片付けるには膨大な労力がいりますよ。
それを考えたら、散らかったまま暮らしたほうが楽ってことですよ!
魔人
・・フン。なるほどな。まあどうしようもない考えだが理解できないこともない。
魔人
さっきお前は居心地がいいと言っていたな。
だがそれは、お前がこの環境に順応してしまっているにすぎないと思うぜ?
人間っていうのは順応性が高い生き物だから、どんな環境であっても長く生活しているとある程度適応して、居心地が良いとさえ思うようになる。
魔人
この部屋の状態はまさに混沌だ。
混沌とは秩序立った状態の対極。
お前にとって快適とはとても思えんのだが?
魔人
混沌の中で生活するとはこういうことだ。
  • 物が見つからなくてしょっちゅう何かを探している
  • タンスや押入れが放置されて機能していない
  • 体を伸ばして眠ることができない
  • 異臭が発生している
  • 虫や菌類と同居している
  • 空気がよどんでいる
  • 他の人間を部屋に入れることができない
魔人
こうしてみると魔界と大して変わらん環境だな。
人間にとってこういう生活は快適ではないと思うのだが・・。
思い当たるところがあるのではないか?
カイワレ
思い当たります・・。全部・・。
カイワレ
今のままじゃダメだってわかってはいるけど・・、ちょっと片付けてもまたすぐに汚部屋生活に戻っちゃうんです・・。
魔人
フフッ・・。そうか・・。
魔人
しかし、お前のようなヤツと違って、部屋が常に片付いているような人間もいるだろ?
そういうヤツらはどうして片付いているのか、その理由を考えてみたことは無いのか?
カイワレ
それは・・、そういう人は、しょっちゅう掃除してるからじゃないんですか?
魔人
クク・・。不正解とまでは言えないが、そうじゃない。
魔人
いいか。片付けが得意な人間の部屋というのは、そもそも散らからないんだよ。
カイワレ
えええ?!そんなバカな!
魔人
いや、正確にいえば、散らかることはあるんだが、散らかったとしてもあっという間に片付くんだよ。
だから、ほとんど常に片付いた状態でくらしていける。
魔人
つまりな?常に片付けできているような『仕組み』があるんだ。
その仕組みさえできていれば、部屋を片付いた状態に維持することは簡単にできる。
カイワレ
それ、本当なんですか!?
魔人
もちろんだ。
ちゃんと理解した上でその仕組みを構築すれば、たとえお前のようなだらしない人間であっても片付いた状態を維持できるとおもうぜ?
魔人
この話が事実ならば・・、この汚部屋を苦労して片付けることにも価値が見いだせるだろ?
カイワレ
そう、ですね・・。
魔人さん、その仕組みをボクに教えてくれませんか??
それを聞いたうえで、もしもボクにもできそうであれば、仕方ないから片付けを始めてみます。
魔人
・・・なにか引っかかる言い方だが、まあいいだろう。教えてやる。
そのうえで、このまま汚部屋に暮らすもよし、片付いたキレイな部屋で暮らすもよし、好きにすればいいだろう。

 

 

 


 

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